■MC機の性能を引き出す為の加工テクニック~W=C×T理論
MC機の性能は年々進化し、ワークの加工精度は高いレベルに達している。しかし、同じMC機でも技術者のT(テクニック)の差によってワーク精度に差が生じる。加工時の刃先の振動及び刃先位置の伸縮を抑える事が、ワーク精度の向上につながる。この振動と伸縮を抑えるために、C(MC機+工場環境)ループの中に存在するT領域を明確にし、分析することが必要である。
図表1 Cループ理論の概略
出典:「力のセンシングとアクチュエーションの統合に関する研究(1998年/松本潔)」
C×T理論
W(ワークの加工総合誤差)=C(工場環境誤差+MC誤差)× T(テクニック誤差)
*テクニック誤差(T):ワーク特性毎のTool構築技術+ワーク加工技術+固定具構築技術
図表2 C×T理論と誤差要因の分類図
K.SaitoがT領域を新たに定義したのは、30年前と比べて、ワークに求められる精度レベルが格段に上がっており、従来誤差発生要因として問題とならなかった “MC機を操作する技術者のテクニックの及ぶ領域”のレベルアップが必須となってきたからである。MC機を使用する加工現場でのT(テクニック)誤差を小さくする方法は、費用0または、少ない費用でできる。
近年の1万2千回転以上のマシニングセンタを、技術者が正しく操作・段取りをおこなえば、精度を出すことが難しいと思われている5軸加工機械でも、空間精度誤差±0.002mm以内のワークを作ることは可能である。なお工場環境誤差は、MC誤差同様、技術者のテクニックが及ばない領域のため、本論では工場環境誤差+MC誤差の累積であるCループ誤差については言及しない。但し、実際には工場環境誤差は、ワンプログラムの加工時間の長さの影響を大きく受ける。